犬の体臭が強いのは正常?異常?体臭から分かる病気について

犬のあの独特なニオイは、好きな人にはたまらないかもしれませんが気になる人は気になってしまいます。ずっと一緒にいる飼い主なら慣れますが、たまにくるお客様ならなおさらでしょう。また、あまりににおう場合は病気の可能性もあります。

今回は犬の体臭対策や体臭が酷くなる病気について解説します。

目次

犬の身体はもともとにおう?

愛犬はちゃんと定期的にシャンプーでキレイにしているのに、少し経ったらまた独特なニオイが……なんてことが一度はあると思います。なぜここまで犬は体臭が強くなるのでしょうか。その答えは『汗』にあります。実は犬と人間とでは、汗を出す器官である汗腺のバランスが異なっているのです。

汗腺には、透明でニオイの少ない汗を出すエクリン腺と、白くニオイの強いアポクリン腺の2種類があります。人間の場合、体中の汗腺のほとんどをエクリン腺が占めており、アポクリン腺は脇の下などの一部の場所にしかありません。しかし犬は反対にアポクリン腺が大半を占めているのです。

つまり端的に言えば、犬はニオイの強い汗を出すアポクリン腺が多いから体臭が強くなりやすいということなんですね。このニオイは犬同士のコミュニケーションだったり、異性に対するフェロモンの役割を持っているため、犬にとっては大事なニオイなのです。

犬の体臭対策【場所別】

犬のどこからにおいが発生しているのかによって、求められる対策も異なってきます。ここでは、『身体』『口の中』『肛門付近』の3つに分けて、それぞれの対策について見ていきます。

犬の身体がにおう

先述したように、体全体から獣臭いようなニオイがある場合は汗や皮脂汚れによるものです。定期的にシャンプーで洗い流しておけば、そこまで気になるような体臭にはならないでしょう。また、毛が長くなる犬種の場合は、トリミングサロンで少しだけ短くしてもらうのも手です。

シャンプーする場合は、2週間に1回を目安にしましょう。足回りや頭の周辺、お尻周りなどは特にニオイが強くなりやすいため、重点的に洗ってください。シャンプー以外でも、散歩帰りなんかは、拭き取りシートで足だけ拭くと汚れが溜まりにくいですよ。

ただし、犬にとって自分の体臭は精神を安定させるためにも必要なもの。ある程度のニオイは残しておくことが大切です。

犬の口の中がにおう

愛犬の口が開いた時に強烈なニオイを感じたら、歯周病の可能性が高いです。歯周病そのものの概要は後の項目で詳しく解説しますが、犬は人間よりもはるかに歯周病になりやすいとされています。というのも、犬は歯周病の原因でもある歯垢が頑固な歯石へと変化するまでの期間が3日程度と短く、オーラルケアをしていても歯周病を完璧に予防するのは困難です。

とはいえ歯磨きケアが一番効果的なのも事実。毎日丁寧に歯磨きして、口内を清潔に保つ事で口臭も予防できます。また、年に1回は動物病院で歯石除去をお願いするとより安心です。

犬の肛門近くがにおう

肛門やその周囲はもともと便を排出する場所ですので、当然ニオイもそれ相応に強いのが当たり前です。しかし、あまりにニオイが強すぎるようであれば肛門腺に分泌液が溜まっているのかもしれません。肛門には時計でいう4時と8時の方向に肛門腺と呼ばれる器官があり、その中には悪臭を放つ分泌液が入っています。

本来であればこの分泌液は便と一緒に排出されるはずですが、何らかの理由で排出する穴が塞がってしまうと、分泌液がどんどん溜まっていきます。便のようなニオイが残るのは、この分泌液がちゃんと排出されていない証拠です。この場合は、『肛門腺絞り』という方法で直接分泌液を絞り取る必要があります。

方法としては、『しっぽを持って肛門が見えるようにする』『肛門から押し出すような形で分泌液を絞る』といった感じ。初見では難しいと思いますので、最初は動物病院でやってもらうことをおすすめします。

犬の体臭から見る病気の可能性【場所別】

普段とはまったく違うにおいがする場合、もしかしたら病気になっている可能性があります。ここでは、さきほどと同じく『身体』『口の中』『肛門付近』に分けて、悪臭がする病気について見ていきます。

犬の身体がにおう時の病気

普段よりも体臭がきつい場合、考えられる病気としては『脂漏症』と『指間炎』です。

脂漏症は皮脂が大量に分泌されたり、逆に皮脂が全然ない状態になる症状で、体全体がギトギトしたり乾燥してしまいます。体臭が強くなるのは前者の症状で、大量に分筆された皮脂が酸化する事で独特なにおいを発するようになります。脂漏症はもともと犬がなりやすい他、アレルギー性皮膚炎やマラセチア感染症によっても発症する事があります。

指間炎は指の間や肉球に炎症が出来ている状態の事です。皮膚疾患や怪我によって炎症が起きた状態で、犬が患部を気にして舐めたりすると更に症状が悪化してしまう事もあります。舐める事で患部がよだれまみれになってしまうため、においも強くなります。

犬の口の中がにおう時の病気

先述した通り、犬の口がにおう場合は歯周病の可能性が高いです。歯周病は身近な病気ではあるものの、悪化すると顎下の骨を溶かしてしまったり、頬に穴を開けるような事もある恐ろしい病気でもあります。オーラルケアをしっかりと心がけ、定期的に動物病院で歯石除去をお願いしてもらいましょう。

また歯周病以外では、内臓のどこかが悪いのかもしれません。特に腎不全と肝不全は口臭が発生する機能不全で、腎臓や肝臓で代謝されるはずだった毒素が体内に残り続けた結果臭くなる事があります。他にも、便のような臭いが口の中からする場合は腸閉塞の可能性があります。放置していると命に関わる重大な状態ですので、急いで動物病院に向かいましょう。

犬の肛門近くがにおう時の病気

犬の肛門近くが特ににおう場合は、便の調子が悪いのかもしれません。そういう時は、便の色や硬さを見てみましょう。普段の健康的な便とは違う状態なら、体内に異常がある可能性が考えられます。

例えば、便の色が赤色や黒色だった場合や鉄のようなにおいがする場合は、肛門付近や小腸が出血しているかもしれません。他にも、油っぽく黄色い便や下痢が見られる場合なら、肝臓やすい臓といった内蔵に異常が出ている可能性があります。

普段から愛犬の便を見て、なにが正常でなにが異常なのか分かるようにしておきましょう。

犬の体臭が強すぎる場合は動物病院へ

犬はもともと独特なにおいがする動物ですが、これはいわゆる『獣臭さ』であって身体に異常があるわけではありません。言い換えれば、それ以外の『鉄臭い』や『便の臭い』がする場合は体内に異常が発生している可能性があります。

特に内蔵系の病気は早期発見・早期治療が重要である事が多いため、「なにかうちの子のにおいがおかしいな」と感じたら、すぐに動物病院で診察してもらうようにしましょう。

天国への扉コラム