犬の歯周病の症状ってなに?デンタルケアの方法と合わせて解説

歯垢や歯石が溜まって発症する歯周病。私達にも馴染みのある病気ですが、犬の歯周病は人間のそれよりも発症しやすく、大変危険な病気です。愛犬の口臭がキツかったり、口を気にしていたら、それは歯周病のせいかもしれません。

今回は犬が歯周病になりやすい理由や症状、対策についてお話していきます。

目次

犬は歯周病になりやすいってホント?

犬や猫は歯周病になりやすいという話、聞いた事ありますか?実は本当に彼らは歯周病になりやすい体質なのです。では、その理由について見ていきましょう。

そもそも歯周病はどうやってなるのか

歯周病は、歯と歯茎の間にある隙間に潜む歯周病菌によって歯肉が炎症を起こす状態の事をいいます。また、炎症によって歯を支える骨が溶けてしまい、歯がグラグラする事もあります。混同されがちですが、細菌の作る酸で歯が溶ける『虫歯』とは異なる病気です。

もともと動物の口には数百種類もの細菌が活動していますが、本来は悪影響を及ぼせるだけの力を持っていません。しかし、糖分の過剰摂取やデンタルケアを怠るなどで細菌が増え始め、やがて粘り気のある歯垢(プラーク)となって歯の表面に付着します。この歯垢の中には大量の細菌が潜んでおり、これらが毒素を排出して炎症を引き起こしているのが歯周病の正体というわけですね

また、歯垢は放置していると唾液に含まれるリン酸やカルシウムと結合して歯石へと変化します。歯石は歯磨きでは落とせないほど硬く、病院で歯石除去を依頼する必要があります。

犬が歯周病になりやすい原因

犬と人間の口内には、大きな違いがあります。

それは『口内のpH』の違い。pHは分かりやすく言えば酸性かアルカリ性、どちらに偏っているのかを示すものです。これが人間の場合、pH6.8程度の限りなく中性に近い酸性です。唾液が多くなると酸性に傾くため、飲食する事で虫歯になってしまうわけですね。

これに対して犬の口内はpH8.0程度の弱アルカリ性です。虫歯菌はアルカリ性の環境ではあまり繁殖できないため、虫歯になる事はあまりありません。その代わりに唾液が固まりやすく、歯垢から歯石になる期間が非常に短くなっています。

人間の場合、歯垢が歯石になるまではおよそ2週間〜3週間ほどかかりますが、犬はなんと3日もあれば歯石へと変化してしまいます。そのため、「歯石除去してもらっているのに歯周病になった!」と驚く方も多いです。

犬が歯周病になった時の症状

歯周病は口内環境を悪くするだけではなく、その他にも様々な悪影響を及ぼす危険な病気です。ここからは、歯周病の症状や与える影響について見ていきましょう。

歯周病の初期症状

歯周病は、まず歯に付着している歯垢や歯石が炎症を引き起こし、歯肉が赤く腫れあがります。この状態を『歯肉炎』と呼び、痛みこそあれど適切な治療をすれば治る事の方が多いです。ただし、自分の歯肉ならともかく、犬の歯肉が腫れているかどうかなんて注視しなければ分からないため、見逃してしまう事もあります。

歯肉炎を放置するとやがて『歯周炎』という状態に進みます。これは歯と歯肉にある僅かな隙間に細菌が入り込む事で、歯がグラグラするようになったり、強い口臭の原因になったりします。また、この隙間が深くなったものを『歯周ポケット』と呼び、ポケット内に入り込んだ歯垢はブラッシングでも取り除くのが困難です。

症状が進行すると……

歯周病は歯の病気ではありますが、その影響は歯だけに留まりません。例えば、歯が痛いとご飯を食べられなくなってストレスが溜まったり、栄養失調を招く可能性があります。口内の状態が悪いと、生活の質が著しく下がってしまうのです。

歯石には細菌が大量に潜んでいる事はお話した通りですが、これが他の場所に移動すると更に危険。下顎の骨に行きつけば骨を溶かして頬に穴を開け、上顎に行きつけば目の下に膿を溜めてブドウ膜炎を引き起こす事があります。また、骨が脆くなると些細な衝撃で骨折するリスクも高まります。

他にも、この細菌が内蔵まで流れる事もあり、腎不全や心不全などの病気を起こす原因になる事もあるようです。歯の病気だと思って油断していると、取り返しのつかない事態にまで発展するかも……。

犬が歯周病にならないように

歯周病にならないためには、飼い主様によるデンタルケアが必要不可欠です。そこで、いつから始めればいいのか、どうやったら嫌がられずに歯磨きできるのかについて見ていきましょう。

犬が抵抗しない歯磨きの方法

歯周病にならないためには、歯磨きをしてあげる必要があります。しかし、最初からいきなり歯ブラシで歯磨きしようとすると、犬が嫌がってしまって上手に歯を磨けません。かといって無理やり歯磨きさせるのも可哀そうですし、ストレスの原因にもなります。まずは歯磨きに慣れてもらう訓練をしましょう。

訓練の方法は単純で、『口元に触る』『歯磨きシートで歯を磨く』『歯ブラシで歯を磨く』というステップを踏むだけです。

まず口元に触ることから。最初はスキンシップしている時にさりげなく触るなどして口元に手をやる事に慣れてもらいます。この際、触らせてくれたご褒美としておやつを与えていくと、スムーズに訓練できますよ。

口元に触る事に慣れてもらえたら、次は市販の歯磨きシートで歯磨きします。口に軽く指を入れて、歯を優しく触る感じで磨いてください。この時、犬がいきなり口を閉じる事もあるので、はじめは前歯からゆっくり奥歯に向かうように磨きましょう。

最後に歯ブラシで歯を磨いてみます。ブラシを持つ際はペンを持つような持ち方で、歯と歯ぐきの隙間から歯垢を掻き出すように磨くのがポイントです。ただし、嫌がってる場合は犬や飼い主も怪我してしまうため、すぐに中断してくださいね。

歯磨きはいつから?

結論から先に言ってしまうと、子犬の時から歯磨き訓練をする方がおすすめです。子犬は歯垢も歯石もそれほど多く発生しませんが、それでも絶対に歯周病にならないという保証はありません。また、最初のうちに歯磨きに慣れてもらう事で、成犬になってからスムーズに歯磨きできるというメリットもあります。

デンタルケアは毎日行う

歯磨き訓練とは別に、デンタルケアそのものは毎日行った方がいいです。ここまでお話したように歯垢が歯石に変わるスピードが速いため、最低でも1日置きにはケアしないと歯石が出来上がってしまう可能性があります。

ただし、『毎日ケアする』事が目的ではなく、あくまで綺麗に磨けたかの方が大事です。どれだけ歯の表面だけ磨いても、歯と歯ぐきの間にある歯垢を取り除かない限り歯周病は避けられません。しっかり丁寧に、かつ毎日又は1日置きにケアする事を心がけてください。

また、デンタルケアをしていても歯石が出来てしまう事があります。万が一に備えて、1年に1回は動物病院で歯石除去をお願いする事をおすすめします。

犬の歯周病は放置厳禁!

犬の歯周病は、最初のうちは口臭が気になるくらいですが、そこから骨が溶けて骨折したり、命に関わるほど危険な病気を発症してしまうなど非常に危険な病気です。

とはいっても、犬の口内はどうしても意識して見てみないと分からないもの。毎日のデンタルケアを通して、口内環境に異常がないかチェックしてあげましょう。

天国への扉コラム