現在の飼い猫達は、安全面から室内飼いが推奨されています。しかし、部屋の中で身体を動かすにはそれ相応の工夫が必要であり、なにも対策しないままだと運動不足になってしまう可能性があります。運動不足は肥満を、肥満は万病を招いてしまうため、しっかりと運動不足を解消させてあげましょう。
今回は猫の運動不足が招く病気や、解消方法について解説していきます。
目次
室内飼いの猫は運動不足になりやすい
交通事故や脱走などの危険性から、今では猫は室内飼いが基本です。しかし、日本の家は海外の家よりもスペースが広くないため、思いっきり運動できる空間が確保し辛いためか運動不足になりやすいです。犬と違って運動が好きではない子が多いのも、それに拍車をかけていますね。
また、キャットフードやおやつにも嗜好性の高い種類が増えてきており、グルメな猫は栄養価も偏りがち。猫はもともと偏食の傾向が強く、好きな物だとバクバク食べるため、運動不足と食べすぎによる肥満が起きやすいとされています。
猫が運動不足だと分かるサイン
もともと狩りを主体としていた歴史を持つ猫にとって、運動不足は肥満だけでなくストレスの原因にもなります。ここでは、猫が運動不足だと思われるサインについて見ていきましょう。
肥満体形になっている
運動不足や食べすぎによる影響として、最も分かりやすいのは肥満体型になっているかどうかです。ペルシャ猫のように品種として丸っこい猫もいますが、基本的に猫というのはスリムな身体と優れた敏捷性を兼ね備えています。特に、肋骨部分の脂肪のかかり具合を見れば肥満なのかどうかが一発で分かります。
理想的な猫の体型は『肋骨は見えないけど触ったら確認できる』くらい。触っても脂肪しかない場合は肥満の可能性が高いです。また、『猫を上から見た際に肋骨の後ろから腰までに若干のくびれがある』かどうかも目安になります。
過度なグルーミング行動
猫が自分の舌や足で毛並みを整える行動をグルーミングと呼びますが、この行動は「安心したい」と思った時にも行います。運動不足の状態は猫にとってストレスなため、何とか安心したいと過度にグルーミングを繰り返す事があるのです。
少しのストレスなら毛づくろい程度で済みますが、エスカレートすると手足を噛む、毛が抜けるくらい舐め続けるなどの行動をするようになるため、猫のストレス状況には常に気を配るようにしましょう。
無気力な状態が続いている
猫が運動不足で肥満になると、身体が重くなる事で動きにくく疲れやすくなってしまい、ますます自分から行動する意欲が無くなってしまうようになります。その結果、キャットタワーに登らなくなったり、いつも遊んでいたおもちゃにも興味を示さないなどの無気力状態になる事もあります。
一度こうなってしまうと、『運動したくない』→『肥満になる』→『更にやる気が無くなる』と悪循環に陥ってしまい、改善するのが困難になる事も。なるべくこうなる前に運動不足を解消させてあげてください。
また、無気力状態は運動不足の他、精神的なストレスや抑うつからやってくる事もあるため、念の為に動物病院で相談してみましょう。
真空行動を繰り返している
何もない空間に向かって飛び掛かったり、無意味に周りをグルグル走る事を『真空行動』と呼びます。これは余っている体力を発散させるためやストレス解消のために行うと言われており、このような行動をしている場合は運動不足になっている可能性があります。
ただし、2歳くらいまでの子猫なら自然な行動であり、シニアになるにつれて頻度が少なくなっていくという意見もあります。真空行動は30分程度もすれば大人しくなりますので、頻度や行動時間を見ながら正常か異常かを判断しましょう。
猫の肥満が招く病気
猫の運動不足は肥満や筋肉の衰えを招くため、生活習慣病やヘルニアといった病気を発症してしまうリスクが高まります。ここでは、運動不足が招く病気について具体的に見ていきましょう。
糖尿病
糖尿病とは、体内のインスリンが不足したりうまく機能しない事で、血中の糖が増えてしまう病気です。本来インスリンは膵臓から分泌されて血中の糖を細胞に取り込みエネルギー源にしてくれますが、糖尿病はこの作用が効きづらくなるため、身体に様々な不調を招いてしまいます。
糖尿病は生活習慣病の代表的とも言える病気の一つで、運動不足や食べすぎによる肥満が原因で発症する事があります。特に肥満から来る糖尿病は自覚症状がない事が多く、気が付いたら進行していたケースも見られます。
尿路結石
尿路結石とは、腎臓から尿道までの『尿路』という通り道の間に結晶や結石が生じてしまう病気の事で、別名『尿石症』とも呼ばれています。石のサイズはまちまちで、おしっこと一緒に流れてしまうくらい小さな粒から、数cmくらいの大きな塊まで様々です。特に大きな塊によって尿をせき止めてしまう事を『尿路閉塞』と呼び、1日以上も続くと毒素が溜まり『尿毒症』という危険な状態に変化します。
尿路結石は尿道が細く長いオス猫がなりやすい他、肥満の猫も発症するリスクが高い病気です。また、再発しやすい病気とも言われており、生活習慣を徹底的に見つめ直す必要があります。
椎間板ヘルニア
椎間板(ついかんばん)は背骨と背骨の間にある軟骨の事で、背骨同士を連結させると共にクッションとしての役割を持ちます。椎間板ヘルニアは、この軟骨の中にある髄核という部分が本来の場所から飛び出して神経にぶつかってしまう状態の事を指します。
症状は小さな痛みから始まり、重症化すれば自力での歩行が困難になるほどに痛みが増してきますが、初期段階だとあまり行動に変化が見られないため飼い主様も気づきにくいです。定期的にボディチェックを行い、猫が痛がっていないかなどを確認しましょう。
猫の運動不足と肥満を解消する方法
それでは、ここからは具体的に運動不足や肥満を解消する方法について解説していきます。猫の健康的な生活のためにも、しっかりサポートしてあげましょう!
キャットタワー
猫は平面を走る運動よりも、上下運動の方が重要です。理由としては外敵から身を守るために高所に登る事が多かったため、高い所が好きだからと言われていますね。そのため、猫の運動不足を解消するには、『登る』『降りる』『飛び上がる』といった要素を重点的に行わせましょう。
キャットタワーは上下運動を促すのに最適で、スペースの確保も容易。また、爪とぎ機能が付いているタイプも多く、ストレス解消のためにも、猫を飼うなら是非とも欲しいグッズです。
適切な食事
運動不足とは異なりますが、肥満を防止するためには適切な食事も必要不可欠です。猫は偏食家な子も多いため、飼い主様がしっかりサポートしてあげないと食べすぎてしまう可能性があります。特に猫の好みに合わせて嗜好性の高いご飯ばかり与えていると、脂質や炭水化物を取りすぎてしまうかもしれません。
では適切な食事とは何なのかというと、ズバリ『総合栄養食』と『水』です。総合栄養食とは、簡単に言えば必要な栄養素がバランスよく組み込まれているペットフードの事で、これと水分補給だけしていれば理論上は健康的に生活できます。
後は間食の量を調節するなどして、カロリー面にだけ注意しましょう。
猫の運動不足は病気を招く!
室内飼いの猫は、部屋のスペースも相まって運動不足になりやすく、飼い主様による適格なサポートが必要です。キャットタワーや猫じゃらしなど、猫が興味を持ってくれそうな方法で運動させて健康的な肉体を維持させましょう。
また、食事方法に気を配る事も大切です。総合栄養食をメインとしながら、脂質や炭水化物を取りすぎないようにしてください。