老犬が夜泣きする時に考えられる原因と対応について

老犬が夜泣きをする場合、決して老化によるものだと諦めてはいけません。夜泣きは愛犬の感情表現の一つであり、飼い主に助けを求めているのです。また、そのままにしておくとご近所トラブルに発展したり、飼い主自身の心身の負担につながる可能性もあります。

今回は老犬が夜泣きをする原因や対策、周囲への配慮についてお話していきます。

目次

老犬が夜泣きをしてしまう主な原因

老犬が夜泣きする場合、大きく分けて『認知症』と『飼育環境』の2つが考えられます。より詳しく見ていきましょう。

認知症

老犬の夜泣きと聞いて、真っ先に認知症の影響だと考えた人も多いでしょう。認知症は老化現象の一つとして当たり前だと思われがちですが、実際は少し異なります。基本的に老化の影響は身体能力や行動力の低下といった部分が大きいのですが、認知症の場合は脳の記憶力が低下しているため、直前の目的を忘れたり無意味な行動を繰り返すようになります。

そんな認知症の症状に生活が昼夜逆転してしまうというものがあり、これが夜泣きに繋がるケースがあります。日中のうちに寝てしまい、本来寝るべき夜に眠くならないため、昼間に要求するのと同じ感覚で夜に飼い主を呼んでしまうのです。

認知度には昼夜逆転の他にも、粗相を繰り返したり、仲の良かった人や他の犬に対して警戒するといった症状が見られます。もしこれらの症状と夜泣きが一緒に出ているのなら、認知症の可能性を考えて動物病院で診察してもらいましょう。

身体が痛くて眠れない

老犬になっても成犬と同じ寝具を使っている場合は、身体が痛くて眠れていない可能性があります。老犬は老化によって筋肉が衰えていたり、関節の節々が痛くなりやすくなっているため、今までと同じような寝心地だと身体への負担が大きいのです。

特に身体の痛みは、昼の活動している時間は気にしていない子も多く、夜に眠れない程度の痛みだった場合は夜泣き以外に特徴的な行動をしません。階段の上り下りや散歩を嫌がるなど、日中の行動をよく観察する事で違和感を感じたのなら、身体に負担がかかっている可能性があります。

不安を感じて眠れない

老化による影響は身体への負担だけではありません。五感が鈍くなることで、より光や音に敏感になったり、視力や聴力が弱くて飼い主の存在を認識しづらくなります。その結果、危険が迫る夜の暗闇に孤独感を感じて、飼い主を呼ぶ……つまり夜泣きをするようになっているのかもしれません。

その他の原因

上述した原因以外でも、生活を送るうえでの変化が影響して夜泣きへと繋がっている可能性があります。下記にいくつか例を上げましたので、参考にしてみてください。

・ご飯のタイミングや食事スピードがズレる事で深夜にお腹が空いてしまい、飼い主にねだるために夜泣きをした

・深夜にトイレに行きたいが、五感が鈍くなってトイレの場所に行けないなどの理由で飼い主を呼ぶ

・深夜の車の音や風の音に反応して吠えている

老犬が夜泣きをする場合の対応

老犬が夜泣きする場合、原因に合わせた対応が必要です。ここでは前項で出した原因別に、それぞれの対応について見ていきます。

認知症の場合

認知症の疑いがある場合、夜泣きは昼夜逆転による体内時計や自律神経の乱れによって起こっています。少しずつでも、昼に活動して夜に寝る生活へと戻していくことで、太陽の光で体内時計をリセットさせてあげましょう。

例えば、もし日中にずっと寝ている場合は、少し可愛そうですが起こしてあげてください。ただ単純に起こすだけでは寝ぼけたり二度寝をする可能性がありますので、起こした後はおやつをあげたりスキンシップを取るのがおすすめです。

あまりにも認知症の症状が重い場合は飼い主だけの力ではどうにもできない事があります。その際は、犬が生活する様子をスマホなどで録画してかかりつけの獣医師に相談してみましょう。必要に応じてお薬を処方してくれたり、生活する上でのアドバイスを貰えます。

身体が痛い場合

身体が痛くて夜泣きをしている場合は、更に細かな原因を見るために獣医師と相談しながら介護していくことになります。もし関節の節々が痛いだけなら寝具の購入や飼い主のサポートだけですみますが、病気の前兆や怪我の可能性も捨てきれません。もし病気の場合は治療をする事になります。

ただ、どちらにしても寝床の調整は必要でしょう。肉厚で柔らかいクッションに変えてあげるだけでも、かなり負担を軽減できます。それ以外にも、怪我防止のために犬の通り道に家具を置かないなどの配慮も効果的です。

不安を感じている場合

飼い主を近くに感じられずに不安になっている場合は、日中のスキンシップや寝床の調整が必要です。寝床を飼い主と近くしたり、飼い主の匂いがついている衣服を置いてあげると犬も安心できます。

また、夜泣きをした時に叱ってはいけません。あくまで要求や寂しさからくる行動だという事を忘れずに、優しく対応してあげましょう。それでも飼い主自身の負担が大きいようでしたら、獣医師の力を借りる事も大切です。

老犬が夜泣きした時の周囲への配慮

老犬の夜泣きは飼い主の負担にも繋がりますが、周囲に音が漏れている場合は更に近隣住民の負担へと広がっていきます。ここでは周囲への配慮について見ていきましょう。

自宅の防音対策

夜泣きが続く可能性がある場合、声が響かないように防音設備を整えた方がいいでしょう。深夜の音は想像以上に響きますし、近隣住民に迷惑をかけてしまう可能性があります。

防音対策と言うと少し大げさですが、例えば遮音カーテンや防音マットを設置するだけでも一定の効果があります。出費自体はどうしてもかかりますが、老犬の介護の一貫として受け入れましょう。こういった設備は夜泣きが無くなったとしても、無駄になる事はありませんから。

近隣トラブルを避ける方法

夜泣きが続いているのにも関わらず何も対策をしていない場合、オブラートに包まずに言うのなら『あの飼い主は犬がうるさいのに何もしていない』と周囲に見られてしまう可能性があります。

実際、過去には犬の夜泣きが原因で裁判を起こされたケースがあり、その時は慰謝料や弁護士費用を含む38万円の請求が下されました。近隣トラブルは、決して甘く見てはいけないのです。全員が全員、ペットに対して快く思っているわけではありませんから。

もし全体に周知するのが怖かったり、タイミングが合わない場合は自治体や町内会に相談してみましょう。とにかく、『何もしてない』という状況を変える事が大切です。

老犬が夜泣きをする理由を考えよう

老犬に限った話ではありませんが、夜泣きをする事自体は珍しい事ではありません。病気や怪我で泣いている事もあれば、飼い主に何かしらの要求をしている事もあります。ただし、「珍しくない」という理由で放置したり、騒音に対する周囲の配慮を怠っていいわけではありません。

無用なトラブルを招かないためにも、自分の心身の負担を考慮しつつ、老犬のサポートと周囲の対応をしていきましょう。

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